医学書の原案を企画するとき、出版社や共著者のメンバーとと意見が割れる場面は必ず訪れます。また、書いてる企画書が面白いのか不安になる事もあると思います。
そんなとき「多数決で決めてしまおう」と考えがちですが、私はなるべく避けています。理由は、とてもシンプルです。
多くの人が支持する案は、往々にして “最も無難”――つまり平凡になりやすいからです。
もちろん、編集者や共同執筆者、臨床の第一線で働く仲間たちの意見を聴き、バランス感覚を保つことは大切です。
しかし最終的に企画の軸と信念を担っているのは、決定権を持つ執筆者にほかなりません。だからこそ、悩んだときほど、特に企画書の原案を書き始める段階では、「自分で結論を出す」覚悟が欠かせないと感じています。
多数決を避けたい理由
たとえば救急の教科書を企画しているとします。
「基本的なABCD アプローチの解説を章立てに盛り込むかどうか」「最新ガイドラインより現場の実例を優先するか」など、骨太な方針は読者に提供したい体験そのものに直結します。
ここで多数決に頼ると「どちらも八割くらい盛り込む」という折衷案が浮上しがちです。
結果、ABCDアプローチの記載も最新エビデンスに基づいた治療も中途半端になり、読者の心に刺さりづらい一冊が出来上がってしまいます。
尖った面白さや深い学びは、誰か一人の強いビジョンに支えられることでこそ生まれます。
多数決を活かせる場面
とはいえ私は書籍の「共感ポイント」を探すときにだけ、多数決を活用することがあります。
たとえば救急外来で頻発する “ピットフォールあるある” を募集するとき。
「脳卒中を疑ったつもりが実は低血糖だった瞬間」など、
現場で誰もが経験しやすい小さな“つまずき”を洗い出す際は、多くの方に意見を求め、その共通項を拾い上げます。
こうしたエピソードは読者との距離を縮める “共感の接着剤”です。
論理構成やメッセージの芯を崩さない範囲で、読者の日常に寄り添うスパイスとして取り入れるなら、多数決はむしろ強力な武器になります。
悩んだときこそ「最後は自分で決める」
本質的な方針に迷いが生じたときは、いったん机を離れ、「この一冊で読者にどう変わってほしいか」を自分に問い直します。
そして得た答えをもとに、集めた意見を整理し、最後は自分の手で舵を切る――それが、尖った魅力を失わない医学書を生む最良の道だと私は信じています。
多数決は決して悪者ではありません。
ただし「悩んだ末の拠り所」にするのではなく、読者との共感づくりや小さな彩りを加える場面に限定して使うと、企画はより深く、より面白く育つはずです。
あなたが次に取り組む医学書でも、ぜひビジョンに立脚した独断と共感を生む多数決を使い分けてみてください。
尖った個性と温かな共感が両立した一冊になることでしょう。
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